ジャコメッティ展、不思議な魅力

国立新美術館で アルベルト-ジャコメッティ展 を見てきました。
この細長い印象的な彫刻、もうすぐ会期も終わりだと思うとすごく見たくなってしまいました。
いつもぎりぎりのわたしです。


アルベルト-ジャコメッティはスイス人ですが、ずっとフランスのモンパルナスに居を構えて製作していました。
ジャコメッティの面差しはまるで哲学者のようで、ただひたすら芸術に捧げた生涯です。
1966年に64歳で亡くなり、今回の展覧会は「没後半世紀を経た大回顧展」と銘打たれています。

とことん写実に近づくことを探求した結果、写真のような細長い彫刻が彼の独特なスタイルになりました。

彫刻は屋外に展示されることも多いのですが、ジャコメッティの作品はすごく細いので、箱根の彫刻の森、美ヶ原高原美術館等でのレプリカ展示は難しいかなと思いました。
会場内に屋外のテラスや道に展示されている写真がありましたが、ちょっと違和感を感じました。

自然の中では ヘンリームーア や ロダンのような、どっしりとした彫刻が合います。
その点、ジャコメッティの作品はそぎ落としたような細さなので、周りが 無 の方が作品が引き立つような気がします。

それはそれとしてジャコメッティ、大きい作品ばかりではなく、初期のころはマッチ箱に入るような極端に小さい作品もありました。
説明によると、見たものの姿を探求していくなかで、作品のサイズが変わってしまうということに相当な葛藤があったようです。
それにしても小さすぎる。まるで根付の細工のようでした。

デッサンもたくさん展示されていました。
不思議なことにこちらは普通のデッサンです。
こだわりを示すたくさんの線で描かれていました。
写生は長時間にわたり、あまりに過酷なため、モデルはごく身近な人間しかできなかったようです。
作品に一つ年下の弟がモデルになった絵や彫刻が多いのはそのためです。

それにしても彼の作品は不思議です。細くてミイラのようなのに暗さはありません。
むしろ愛嬌すら感じます。
何点か写真撮影がOKだったのでご紹介しますね。


どうでしょう。代表作の「歩く男」(左と中央) は見る角度で少し違った印象を与えます。
いったい、この男の年齢はいくつくらいなんだろう。
若くも見えるし、年老いたようにも見える。
でも、なんだか希望があるような感じがしませんか。
右は女性ですが、こちらは宇宙人のような神秘的な感じがします。
彫刻の表面はまるで壁に塗った漆喰のような感じ、はっきりと目鼻立ちを表わしているわけではないのに、表情がある。なんとも不思議な魅力です。

ジャコメッティは先に書いたようにパリのモンパルナスに長く暮らしていましたが、周りにもたくさんのアーティストが住んでいました。
モンパルナスというと、時代は違えども、あの細長い顔の絵を描くモジリアニも住んでいましたね。
もしかしたら、通じるものがあるのでしょうか。

衣服をまとわない、髪の毛もない、裸の、究極の人間。
そこには貧富や年齢すらもない。
でも、確かに生と動 がある。
不思議な魅力、ジャコメッティ。

出会えてよかった。

国立新美術館では 9/4(月) までの開催ですが、週末、ぜひ会いに行ってみてください。

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